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研究会の概要

目的

 人類は生物分類学上では霊長目に属し、進化史的にはごく最近(600〜700万年前)まで、チンパンジーなどの類人猿とともに進化の過程を歩んできた。上記一連の共同研究は、こうした進化的根拠をもつ人類の存在のありようを見据えるにあたって、その高度な社会的能力(以下、社会性:sociality)の獲得を種そのものの成立における最も重要な特質とみなし、その特質を様々な角度から理論的かつ実証的に解明することを目的としてきた。まず「集団」という比較的顕在化した社会事象を取りあげて、そこに組織化され表象化されたsocietyではなく、同所的に「在る」者たちの「あつまり」の構成原理として社会的な絆(relatedness)をみいだした。これを受け、次に「絆」を形作る様々な決まり事として「制度」を取りあげた。本研究課題は、決まり事の本態に「他者」の存在を位置づけて、人類の社会と社会性の進化の解明に新たな展開を試みるものである。

期待される成果

 ヒトを含む霊長類の「集団」には平等原理、不平等原理など、個体(個人)が他個体(他人)と共存(同所的に存在)するための原理があり、それはしばしば「制度」という形で現前する。本研究課題では、個体(個人)間のミクロな相互行為、とりわけダイアディックな関係を分析の中心に据え、「他者」はどのような存在として個に現れ、対峙し、関係するのかといった側面から、これまで進めてきた人類の社会と社会性の進化に関する議論を逆照射する。 「人類社会の進化史的基盤研究」と銘打った一連の共同研究は、まず「集団」という比較的顕在化した社会事象を取りあげて、そこに組織化され表象化されたsocietyではなく、socialという具体的な個体/個人間の絆(relatedness)の重要性をみいだした。これを受け、次に「絆」を形作る様々な決まり事として「制度」を取りあげた。本研究課題は、そうした決まり事の本態に「他者」の存在を位置づけ、その現れを、「他者」はどのような存在として個に現れ、対峙し、関係するのかといった側面においてヒトとヒト以外の霊長類で比較検討することにより、これまで進めてきた人類の社会と社会性の進化に関する議論を逆照射する。

実施計画

 本研究課題は3年計画とし、各年度に5回の研究会を開催する。研究会では霊長類学、生態人類学、社会文化人類学という3つの学問分野に与するメンバーが、おのおの長期にわたるフィールドワークによって蓄積された知見と最新のデータをもとに報告をし、これに対してメンバー全員で総合ディスカッションをする。
 本研究課題のメンバーの多くは、旧共同研究プロジェクト「人類社会の進化史的基盤研究(1)」の立ち上げ当初からのメンバーであり、「集団」及び「制度」という視点から人類の社会と社会性の進化に関する互いの分野の知見と理論をすでに共有している。本研究課題は、この到達点から出発ないし再出発することとなる。具体的に「他者」の現れとなりうる社会事象には、「所有」、「分配(シェアリング)」、「協力/協同」、「支配」、「移動/移籍」、「互酬性」等、様々な関係のありようを示すキーワードが含まれよう。メンバー構成は、上記の学問分野を3本柱とし、これに倫理学の専門家を加えた。社会的存在としての人間の共存のありかたを追究する学問である倫理学の立場から、ヒトとヒト以外の霊長類の「他者」のありようを検討するためのアリーナを準備すると同時に、哲学的・現象学的な高みからの知見と考察により、ヒトとヒト以外の霊長類の社会と社会性の進化に関する議論を架橋することの理論的意義を考究するための示唆が得られるものと期待する。

成果報告

 研究成果の公開については、(1)成果の公開を迅速におこなうために、AA研のウェブサイトと本ウェブサイトに、研究会の開催予定、研究会の内容や要旨の記録等を随時更新、公開する。また、(2)最終的には、本研究課題の終了後、その翌年度(2015年度)中に印刷媒体による成果論集を編集、刊行する。ここではAA研の共同研究課題出版経費に応募してAA研の出版物とするとともに、商業出版からの刊行をも同時に目指す。